気をつけたいお口の癖とは?歯並びに影響を与える「口腔悪習癖」を改善しよう
2025年05月15日
歯は、わずかな力でも繰り返し加わることで少しずつ動いてしまいます。特に成長期のお子さんの場合、日常生活での「悪い癖」が歯並びや顎の発達に大きな影響を及ぼすことがあります。こうした癖は「口腔悪習癖」と呼ばれ、大人にとっても見逃せない問題です。今回は、気をつけたいお口の癖とその改善方法について詳しく解説します。
指しゃぶりの原因と、お口に与える影響
指しゃぶりは、生まれつきの吸てつ反射(吸うことで安心感を得る本能的な反応)によるものです。3歳ごろまでは無理にやめさせる必要はありませんが、それ以降は指しゃぶりを続けているとお口に影響を与えることがあります。特に、指しゃぶりはストレスや不安が原因で続くことがあります。環境の変化や「指しゃぶりをしていると怒られる」といったことも要注意です。
・出っ歯や開咬の原因に
指しゃぶりは、4〜5歳を過ぎても続けていると問題となります。指が前歯を前方に押し出すことで、上の前歯が出てしまう「出っ歯」や、上下の前歯が噛み合わなくなる「開咬」を引き起こします。また、指の圧力で上顎が狭くなり、噛み合わせが悪くなることもあります。
・顎の発達への悪影響
指しゃぶりによって下顎が後退しやすくなり、成長期の子どもでは顔のバランスや骨格にまで影響を及ぼします。このような変化は、放置すると成人後の矯正治療が難しくなる原因になります。
指しゃぶりへの対応策
・愛情をもってやめるように促す
急にやめさせようとすると、子どもにストレスがかかります。優しく声をかけながら、「もう大きいから指しゃぶりはやめようね」といった形で少しずつ習慣を変えましょう。
・絵本や動画で理解を深める
指しゃぶりをやめることの大切さをテーマにした絵本や動画は、子どもが自発的にやめようとするきっかけになります。
・手先を使う遊びで気を紛らわす
指しゃぶりは手持ち無沙汰のときに無意識に行われます。粘土遊びやブロック、お絵描きなど、手を使う遊びを取り入れてみましょう。
爪を噛む癖の原因と、お口に与える影響
ふとしたときに爪を噛んでしまう主な原因はストレスや緊張、不安、退屈感です。大人の場合は、仕事のプレッシャーや考えごとをしているときなどに無意識に噛んでしまうことが多い傾向にあります。この癖を続けていると、以下のような影響が出る可能性があります。
・歯並びやエナメル質への影響
爪を噛むと前歯に強い圧力がかかり、前歯が傾いたりすき間ができたりします。また、硬い爪を噛み続けることでエナメル質が傷ついたり薄くなることが、将来的にむし歯の原因になることもあります。
・感染リスクの増加
爪には細菌やウイルスが付着しています。これを噛むことで歯ぐきの炎症や口内炎、風邪や感染症のリスクが高まります。
爪を噛む癖への対応策
・爪を短く切りそろえる
噛む対象をなくすために、爪は常に短く清潔に保ちましょう。また、大人の場合は透明なトップコートを塗ると、爪がツルツルして噛みにくくなります。
・ガムや飴で代替行動をとる
爪を噛みたくなったときに、キシリトール入りのガムや砂糖の少ない飴を口に入れると、噛む癖が軽減されます。特にガムは唾液の分泌を促し、口内環境の健康維持にも役立ちます。
・ストレス解消法を見つける
爪を噛む原因がストレスである場合はその原因を特定し、運動や趣味、リラクゼーションなどで対策をしましょう。仕事中なら、デスクで簡単にできる深呼吸やストレッチも効果的です。
舌癖の原因と、舌癖がお口に与える影響
舌癖とは、舌を無意識に前歯や奥歯に押し付ける習慣のことです。この癖は、子どもから大人まで幅広く見られ、お口の健康や歯並びに悪影響を及ぼす原因となります。舌癖の原因には、乳児の頃の舌を前に出して飲み込む方法(乳児嚥下)が残ってしまう「生理的要因」と、ストレスや不安から無意識に舌を動かしてしまう「心理的要因」があります。この癖を続けていると、以下のような影響が出る可能性があります。
・歯並びの乱れ
舌で前歯を押す癖があると少しずつ前歯が前方に押し出され、「出っ歯」や上下の前歯が噛み合わない「開咬」の原因になります。また、舌が奥歯を押す場合は奥歯が外側に広がり、全体の歯並びが崩れてしまいます。
・発音への影響
舌癖があると、サ行やタ行などの発音が不明瞭になることがあります。特に、舌を前歯に押し付ける習慣が強いと「サ行」が「シャ行」に近い発音になるなど、滑舌が悪くなることがあります。
・むし歯や歯周病のリスク増加
舌が常に歯に触れていると唾液の流れが乱れ、むし歯や歯周病のリスクが高まります。唾液には口内の洗浄作用があるため、舌癖によって唾液の働きが妨げられると、細菌の繁殖が進んでしまいます。
舌癖への対応策
・舌の正しい位置を覚える
舌癖の改善には、まず舌の正しい位置を理解することが大切です。舌は通常、上顎の前歯の少し後ろにある「スポット」と呼ばれる部分に軽く触れているのが正しい位置です。鏡を見ながら舌をスポットに置く練習をすると効果的です。
・嚥下訓練を行う
舌癖は飲み込むときの癖と関係があります。水を飲むときに、前歯に舌が当たらないように意識して飲み込む練習をしましょう。具体的には、水を口に含み、舌を上顎につけた状態で飲み込む「MFT(口腔筋機能療法)」が効果的です。これを毎日繰り返すことで、舌の動きを正すことができます。
頬杖の原因と、お口に与える影響
頬杖は、主に姿勢の悪さやストレス、習慣的な動作が原因です。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用中に無意識に頬杖をついてしまうことが多く、特に子どもは学習中や食事中に頬杖をつく傾向があります。また、疲れや退屈、安心感を求める心理的な要因も影響しています。この癖を続けていると、以下のような影響が及ぶ可能性があります。
・歯並びや噛み合わせの乱れ
頬杖をつくと顔の片側に持続的な圧力がかかり、上下の歯がずれてしまいます。特に片側だけに頬杖をつく習慣があると、左右非対称の歯並びや「交叉咬合」と呼ばれる噛み合わせの異常を引き起こす原因になります。また、顎が圧迫されることで、「顎変形症」のリスクも高まります。
・顔のゆがみや骨格への影響
頬杖により頬や顎の骨が長期間にわたって圧迫されると、顔が左右非対称になったり、顎がずれて顔全体がゆがんで見えることがあります。成長期の子どもは特に影響を受けやすく、骨の成長が偏ってしまう原因になります。
頬杖への対応策
まずは、自分がどのタイミングで頬杖をついているのかを把握しましょう。スマートフォンやデスクの前に「頬杖禁止」などのメモを貼ると、意識づけに役立ちます。また、家族や友人に注意してもらうのも効果的です。
また、頬杖は姿勢の悪さからくることが多いため、椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばす習慣をつけましょう。特に長時間のデスクワークや勉強時には、定期的に立ち上がってストレッチをすることも大切です。
唇を噛んだり吸ったりする癖の原因と、お口に与える影響
唇を噛んだり吸ったりする癖は、不安や緊張、ストレス解消の手段として無意識に行われることが多くあります。また、幼少期の指しゃぶりや哺乳瓶の使用が長引いた場合、その延長で唇をいじる癖がつくことがあります。大人の場合でも、集中しているときや考え事をしているときに無意識に行ってしまうことがあります。この癖を続けていると、以下のような影響が及ぶ可能性があります。
・歯並びへの影響(出っ歯や受け口)
上唇を噛んだり吸ったりする癖があると、上の前歯が前方に押し出されて「出っ歯」になりやすく、逆に下唇を噛むと下の前歯が前に出て「受け口」になることがあります。これにより、前歯の噛み合わせがずれ、見た目や機能に影響を及ぼします。
・口周りの筋肉や発音への影響
唇を頻繁に噛むと口周りの筋肉が過度に緊張してしまい、表情が硬くなる原因になります。また、唇や舌の位置が不安定になるため、サ行やタ行の発音が不明瞭になることがあります。
唇を噛む癖への対応策
唇を噛む癖はストレスが原因であることが多いため、適度な運動や深呼吸、趣味の時間を持つことでストレスを緩和しましょう。また、ガムを噛むことは、唇や舌をいじる代替行動として効果的です。
まとめ
口腔悪習癖は、放置しておくと歯並びだけでなく、噛み合わせや顔のバランス、さらにはむし歯や歯周病といった口腔全体の健康に影響を与えます。特に成長期のお子さんの場合、早期に癖を見つけて改善することが大切です。
まずは日常生活で気になる癖がないか確認し、必要に応じて歯科医院で相談してみましょう。
予防治療を検討されている方は、茨城県筑西市にある山口歯科クリニックにご相談ください。
当院では、一般歯科や予防歯科、矯正治療、ホワイトニング、インプラント治療、口腔外科など、さまざまな歯科診療に力を入れています。
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